収録作品
黄金仮面
「黄金仮面」(長編小説)
<あらすじ>
上野公園で開かれた産業博覧会、そこに出品されていた大真珠が黄金仮面に盗まれる。
警官隊は黄金仮面を産業塔の頂上へと追い詰めるが、まんまと騙され逃げられてしまう。
数日後、黄金仮面は日光山中C湖畔にある鷲尾(わしお)家の別邸で、鷲尾氏の娘美子(よしこ)を殺害する。
天理教の教師木場(こば)に扮して黄金仮面を追っていたしろうと探偵明智小五郎は、別邸内の美術館に置かれていた藤原時代の阿弥陀如来像が偽物にすり替えられていることを見抜き、さらに偽物の石膏の一片にA・Lという文字が記されていることに気付く。
美子殺害を明智に見抜かれた侍女の小雪は、美術館内でよろい武者に化けていた何者かに助けられ、モーターボートで湖へと逃げる。明智らは近所の漁師の持ち舟で追い、水中に潜んでいた小雪を捕らえて尋問するが、漁師に化けていた賊が小雪を殺害し、明智らが乗っていた舟を沈めて逃げてしまう。
その後、黄金仮面は有名な大富豪大鳥喜三郎の娘不二子(ふじこ)を懐柔し、大鳥家の家宝「紫式部日記絵巻」を手に入れると、続けてF国大使ルージェール伯爵の邸宅で開かれた大夜会に姿を現す。
ルージェール伯爵にピストルで撃たれた黄金仮面だったが、その仮面を取ると大使館の邦人秘書官浦瀬七郎であった。明智が問いただすと、瀕死の浦瀬は自分が黄金仮面の部下であることを認め、さらに驚くべき人物の名を口にする。
<レビュー>※ネタバレあり
浦瀬は死の間際に、黄金仮面の正体はアルセーヌ・ルパンであると告白します。
アルセーヌ・ルパンとはフランスの小説家モーリス・ルブランの代表作に出てくるかの有名な怪盗紳士です。
さらに浦瀬はルージェール伯爵がルパンであると指し示します。
明智は鷲尾家で盗難があった時(A・Lの文字を見つけた時)からルージェール伯爵が黄金仮面=ルパンではないかと薄々感付いていたため、元パリ警視庁刑事部長でルパンに恨みを持つエベール氏にルージェール伯爵の身元調査を依頼していました。
調査の結果、本物のルージェール伯爵は戦死していたことが分かり、エベールは日本にやってきます。エベールにより偽物のルージェール伯爵がルパンであることが確認され、いよいよ進退窮まったと思われたルパンでしたが、事前に用意していたエレベーター仕掛けの部屋を使って窮地を脱します。
その後、神奈川県O町にあるコンクリートの大仏がルパンの隠れ家であることを突き止めた明智でしたが、ルパンの部下に捕まってしまい、爆発薬に火を付けられ爆死したものと思われました。
警察はルパンの部下2人を捕まえ、ルパンに盗まれた美術品も取り戻しますが、肝心のルパンは大鳥喜三郎の娘不二子ともう1人の部下と共に飛行機で逃亡。しかし、ルパンの部下にすり替わっていた明智が不二子を助け出して物語は終わります。
明智とルパンの攻防はなかなか読み応えがあります。ルパンは人殺しが嫌いという設定ですが、2度も明智を殺そうとしています。
結局ルパン逮捕とはなりませんでしたが、ルパンは不二子も美術品も何も持ち帰ることができなかったので明智の判定勝ちといったところでしょうか。
殺された3人、鷲尾氏の娘美子、美子の侍女の小雪、F国大使館の秘書官浦瀬七郎について触れておきたいと思います。
・小雪が美子を殺した理由
小雪は鷲尾氏の実妹が残した孤児の千秋(ちあき)と深い関係にありましたが、千秋と美子が婚約したことに耐えられずに犯行に及びました。美子がいなくなれば、小雪は千秋と復縁できると信じたのです。
・賊(ルパンの手下)が小雪を殺した理由
小雪は何者か(ルージェール伯爵?)が阿弥陀如来像を盗んだのを見ていました。賊は首領(=ルパン)が血を見る(人を殺す)のが嫌いなため無傷で逃がそうとしましたが、小雪が明智らに捕まってしまったので口封じのため殺害しました。
・ルージェール伯爵(ルパン)が浦瀬七郎を殺した理由
黄金仮面の正体は浦瀬であると思わせるため、ルパンは部下の浦瀬に黄金仮面の扮装をさせピストルで撃ちました。トカゲの尻尾切りを図ったのです。しかし浦瀬が即死しなかったため、黄金仮面の正体がルパンであり、ルパン=ルージェール伯爵であることがばれてしまいました。
明智とルパンの対決にワクワク感はあるものの、明智が死ぬこともルパンが捕まることもないと分かっているので緊張感はやや欠けるかなと思います。
身を隠したルパンの部下2人(日本人)はどうなったのか(この2人のどちらかが小雪殺害の下手人である可能性も)など最後まで不明な点もあり、オリジナリティとトリックの質も含めて星3つに止まりました。
<評価>
☆☆☆
↓メルカリの「江戸川乱歩」検索結果ページ

