江戸川乱歩⑮「白髪鬼」

乱歩とハヤブサ 江戸川乱歩

収録作品
白髪鬼

「白髪鬼」(長編小説)

<あらすじ>
九州の大名の家に生まれた大牟田敏清(おおむたとしきよ)は、妻の瑠璃子(るりこ)と親友の川村義雄(よしお)と共に地獄谷という渓谷へ行くが、地獄谷の高い崖から転落して死亡する。しかし、大牟田家の先祖代々の棺が置かれている「殿様の墓」と呼ばれる石室の中で生き返る。
死に物狂いで棺から出た敏清は、石室内にシナ海の海賊王、朱凌谿(しゅりょうけい)が隠していた財宝を発見した後、先祖の棺の底に掘られた秘密の出入り口から石室を抜け出たが、生き埋めの苦痛と恐怖により自慢の黒髪は一本残らず白髪に変わり、老人のような容貌になっていた。
大牟田家の屋敷に戻った敏清は瑠璃子と川村が不義の契りを結んでいること、さらに崖から転落したのは川村が仕掛けた罠だったことを知って復讐を決心する。
その後、里見重之(さとみしげゆき)という別人に成り変わった敏清は、瑠璃子と川村が二人の間に産まれた赤ん坊を殺して土の中に埋めたことを知る。
白髪鬼となった敏清はこの秘密を利用し、恐怖の復讐を進めていく。

<レビュー>※ネタバレあり
白髪鬼の復讐は次のように進められます。
・瑠璃子と川村が埋めた赤ん坊の死骸を2人に見せて恐怖を与える(瑠璃子は失神する)
・里見(=敏清)と瑠璃子の婚約を発表して川村を激怒させる
・川村をコンクリートで囲まれた部屋に閉じ込め、徐々に降りてくる天井で圧殺する
・瑠璃子を「殿様の墓」へ連れて行き、自ら(里見)の正体が死んだはずの敏清であることを明かす(瑠璃子は再び失神する)
その後、敏清は瑠璃子に川村と赤ん坊の死骸を見せ石室に閉じ込めると、瑠璃子は腐りただれた赤ん坊の死骸を抱いて子守歌を歌い続けました。
こうして白髪鬼の復讐は成し遂げられましたが、敏清は高飛びの途中で警察に捕まり終身懲役となります。

本作はイギリスの作家マリー・コレリの小説「ヴェンデッタ」を黒岩涙香(くろいわるいこう)が翻案し、それをさらに乱歩が翻案した作品です。そのためか比較的シンプルな復讐劇といった趣で、乱歩らしい胡散臭さやエログロはやや希薄な印象を受けます。とはいえ、赤ん坊の死骸を抱いての子守歌にはいかにも乱歩らしいグロさを感じました。

<評価>
☆☆☆

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