力道山が残した名言「プロレスは、ルールのある喧嘩である」
プロレスライターの流 智美(ながれ ともみ)氏による監修・解説のもと、新日本プロレスのリングで起こった喧嘩マッチの数々を収めた本作。
「喧嘩マッチ」「不穏試合」「シュート」「セメント」といったワードに胸が躍る方には特に興味深い作品だろう。
ここではDISC-2を紹介する。
① 元祖・制裁マッチ!キラー猪木覚醒の瞬間。
昭和52年11月18日 松阪市体育館
ハンディキャップマッチ
グレート・アントニオ vs 星野勘太郎&永源遙&木村健吾
怪力を売りにしていた密林王グレート・アントニオ。バス引きデモンストレーションの映像が特別収録されている。1対3のハンディキャップマッチはアントニオの怪物ぶりを印象付けるにはもってこい。胡散臭いマネージャーもまた良い。
昭和52年12月8日 蔵前国技館
アントニオ猪木 vs グレート・アントニオ
まともなプロレスができないばかりか、猪木を小馬鹿にするようなパフォーマンスを見せるアントニオ。アントニオが猪木の背中から首筋の辺りに強めのパンチを振り下ろすと、キラー猪木のスイッチが入る。顔面への張り手からタックルでアントニオを四つん這いの状態にし、顔面への蹴りを繰り出す。慌てて立ち上がろうとするアントニオだが猪木は片足を取って立たせず、再び顔面へ蹴りを見舞う。さらにうつ伏せでダウン状態のアントニオの頭部にストンピングで追撃。さすがにただ事ではないと察したアントニオのマネージャーが慌ててリングに入り、レフェリーのミスター高橋に必死にアピール。そして試合終了のゴングが鳴る。顔面を真っ赤に染めたアントニオはその後もしばらく立ち上がれなかった。
評価:☆☆☆☆☆
② 非情なる帝王 “パターソン” が魅せた、魂の足攻め
昭和54年11月1日 札幌中島スポーツセンター
坂口征二&藤波辰巳 vs パット・パターソン&グレッグ・バレンタイン
北米ヘビー級王者として来日し、坂口とのタイトルマッチが決まっていた「シスコの帝王」パット・パターソン。数々のトップ外国人レスラーの中で存在感を示す必要があったパターソンは「俺を忘れるな」とばかりに坂口に対して執拗な足攻めを見せた。
評価:☆
③ 人種の壁が作った「ベルリンの壁」 その崩壊の惨劇 狂犬の真骨頂
昭和58年7月7日 大阪府立体育会館
ディック・マードック vs アブドーラ・ザ・ブッチャー
黒人嫌いで喧嘩最強とも噂された「狂犬」ディック・マードックと「黒い呪術師」アブドーラ・ザ・ブッチャー。以前にはブッチャーがシングルマッチの相手にマードックではなくディノ・ブラボーを選んだという因縁もある。
ブッチャーの凶器攻撃により流血したマードックだったが、毒針エルボーをかわすとブレーンバスターで反撃。汗で滑って危険な角度で落ちるブッチャー。さらにマードックは強烈なイス攻撃でブッチャーの額を割る。両者が場外に出たところでノーコンテストのリングが鳴るが、その後もしばらく場外乱闘が続いた。
評価:☆☆
④ 「小鉄の頭に瓶が刺さった…」 プロレス史に残る戦慄の惨劇
昭和53年11月17日 後楽園ホール
プレ日本選手権 予選リーグ
山本小鉄 vs 上田馬之助
日本プロレス出身の両者。山本の方が後輩だが旗揚げから新日本プロレスに参戦。一方、上田は日プロ崩壊後、全日本プロレスや国際プロレスを経て新日本に参戦。
「新日本のリングでは俺の方が先輩だ」と言わんばかりに山本が奇襲をかけ場外戦へ。コーナー最上段から場外の上田目掛けてフライング・ボディ・アタックを敢行するが、よけられて自爆。その直後、ビール瓶で殴られた山本が流血する。星野勘太郎が助太刀するも暴れる上田を止められず、フラフラの状態でリングに上げられた山本はあっさりと3カウントを許す。一度はリングを降りた上田だったが、イスを持って再びリングに上がり山本に一発。その後もイスを振り回す上田を星野らが抑え、なんとかリング外へ追いやった。
評価:☆☆☆
⑤ ~若い奴には負けられない~ まだら狼の凄み
昭和61年6月6日 札幌中島体育センター
IWGPヘビー級王座決定リーグ戦
前田日明 vs 上田馬之助
UWFから新日に復帰した前田と、ガチンコの強さに定評があった上田による一戦。既に40代半ばだった上田のクリーンファイトに舐められていると感じたか、場外で顔面に何発もキックを見舞う前田。それに対し上田がゴングを鳴らす木槌で反撃すると、レフェリーの柴田勝久はゴングを要請。反則負けのゴングが鳴る。
並の選手なら前田の強烈なキックを顔面に何発も受ければ動けなくなるだろう。しかし上田は並外れた打たれ強さと見事な胆力を見せた。
評価:☆☆☆☆☆
⑥ 遂に初公開!偶然か!必然か!運命の一撃
昭和62年11月19日 後楽園ホール
長州力&マサ斎藤&ヒロ斎藤 vs 前田日明&木戸修&高田延彦
バチバチの絡みを見せる長州と前田。長州が木戸に対しサソリ固めを狙っていたところ、前田が後ろから近付き、死角から長州の顔面に強烈なキックを見舞う。かの有名な長州力顔面襲撃事件である。それでも試合を続行し前田に殴りかかる気迫を見せた長州は、高田にリキラリアットを見舞って3カウントを奪う。なぜか逆ギレしている前田は場外フェンスを蹴って退場。
長州は眼窩底骨折、猪木は「プロレス道にもとる」と断罪。前田は無期限出場停止そして解雇となり、第二次UWFへと繋がっていく。
評価:☆☆☆☆☆
⑦ 最強外国人選手による、残酷なる制裁試合
平成2年5月28日 大阪府立体育会館
北尾光司 vs ビッグバン・ベイダー
元横綱双羽黒(ふたはぐろ)の北尾光司が東京ドームでクラッシャー・バンバン・ビガロを相手に華々しくデビュー。しかし格好ばかりで内容が伴わない北尾は観客からブーイングを浴びるようになる。
試合はベイダーが攻め続ける一方的な展開。ロープに投げられた北尾は危険な体勢でリング下に転落。ベイダーを場外フェンスに投げリングに戻った北尾に客席からブーイングが飛ぶ。その後リング上で北尾が出来たのは丸め込みぐらいで、ひたすらベイダーの攻撃を受け続けて3カウントを奪われる。北尾は「受けないプロレス」を身をもって知ることとなった。
評価:☆☆
⑧ 「アイツには負けられない」 若獅子の喧嘩魂ここに
平成4年6月26日 日本武道館
金本浩二&西村修 vs 山本広吉&小島聡
ほぼ同期のヤングライオン4人によるタッグマッチ。
試合開始前、握手と見せかけて小島の顔面を張る金本。試合は金本と小島のマッチアップで始まりバチバチとした展開。4人全員がライバルを意識したような気迫溢れるファイトを見せる。最後は山本の抱え込み式逆エビ固めに西村がギブアップ。
評価:☆☆
⑨ 情念の師弟対決… 高き壁がそこにはあった。
平成10年12月23日 後楽園ホール
佐々木健介 vs 大谷晋二郎
大谷の直訴により実現したカード。
大谷自らがロープを広げ健介をリングに迎え入れる。健介に一礼し、自らのコーナーに戻った大谷はドロップキックで奇襲を仕掛け、すぐさま場外へのプランチャで追撃。リングに戻った大谷は「こんなチャンス滅多にねぇんだよ」と観客にアピールし、顔面ウォッシュ。さらに「本気出せこの野郎」と健介を挑発すると、スイッチが入った健介は大谷の顔面に強烈な張り手を見舞う。負けん気の強い大谷は意地を見せるがパワーの差は歴然。最後はノーザンライトボムに沈んだ。
「このままジュニアでいくか、それともヘビーに転向するか」という大谷の迷いと、現状を打破したいという決意が窺える試合。
評価:☆☆☆☆
⑩ ~覚悟の血戦~ 新日本×WJ代理戦争
平成16年1月4日 東京ドーム
永田裕志 vs 佐々木健介
新日本を退団しWJプロレスに移籍した健介だったが、WJ退団後に再び新日本のリングに上がる。出戻りを許せなかった永田は試合前から怒りを露わにした。
開き直った健介と怒りの永田による遺恨試合は顔面の張り合いから始まり、やがてリングに血だまりができるほどの大流血戦となる。尋常でない出血の永田は顔面を真っ赤に染めナガタロックⅢを極めるが、意地でもギブアップしない健介にレフェリーがたまらず試合をストップ。新日本プロレス史に残る凄惨な試合となった。
評価:☆☆☆
⑪ 最強という名の十字架 ~新日本×K-1対抗戦~
平成16年5月3日 東京ドーム
異種格闘技戦
柴田勝頼 vs 武蔵
若き喧嘩屋、柴田勝頼が挑んだ一世一代の大勝負。対するは当時のK-1日本人選手最強の武蔵。
記者会見での乱闘シーンも収録されている。
ルールは1ラウンド3分。ラウンド制限なし。寝技は20秒まで。ロープブレイクあり。柴田にとっては不利なルールと言える。なお、柴田はオープンフィンガーグローブ、武蔵はキックボクシンググローブを着用。
第1ラウンド、柴田がタックルでテイクダウンを奪うも武蔵が上手く対応、20秒が経過してブレイク。続けて柴田は片足タックルからアキレス腱固めに入るが、これも20秒が経過しブレイク。
第2ラウンド、ロープ際でもつれたところで柴田が頭突き。武蔵側は反則をアピールし、両者セコンド陣がエプロンに上がる。一方、武蔵は打撃でダウンした柴田にお返しとばかりの追撃を見舞う。なんとか立ち上がった柴田だがその後も武蔵の連打を受け、最後は左ハイキックでKOとなった。
評価:☆☆☆
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