江戸川乱歩⑦「月と手袋」

乱歩とハヤブサ 江戸川乱歩

収録作品
「月と手袋」
「地獄風景」
「モノグラム」
「日記帳」

「月と手袋」(短編小説)

<あらすじ>
シナリオ・ライター北村克彦(かつひこ)は、高利貸しの股野(またの)重郎に股野の細君あけみとの不倫関係がばれてしまう。
股野から激しい平手打ちをくって怒った克彦は、取っ組み合いの末に股野の首を絞めて殺す。
事件直後に克彦とあけみが共謀して行ったアリバイ工作のために、警察は犯人を見つけることができないでいた。
事件後、克彦はあけみの家に同居していたが、事件から一カ月あまりたったある日、警視庁の花田警部が二人を訪れ、やがて友だちとして付き合うようになっていく。
その後、花田は私立探偵の明智小五郎と懇意にしていると話し、アリバイ工作のトリックを見破ったかのような素振りで二人を不安にさせる。
克彦とあけみは見えない敵、明智小五郎による心理的攻撃に徐々に消耗していく。
二人は最後まで秘密を隠し通せるのか。

<レビュー>※ネタバレあり
最後まで明智小五郎は姿を見せませんが、克彦とあけみが心理的に追い詰められていく様子から明智の恐ろしさが伝わってきます。
花田が明智を連れてくるという手紙を読んだ克彦とあけみは寝室で話し合いをしますが、警察に盗聴されていることに気付かず万事休す。
克彦は警察と明智のやり方を「心の拷問で卑怯な手段」と非難しますが、それに対し花田は「拷問とは罪のない者でも虚偽の自白をする場合が起こり得るような責め方で、今度の場合は虚偽の自白を強いるような手段は全く取られず、拷問と考えたのは君たちが犯罪者だからだ」と答えます。克彦はぐうの音も出ませんでした。

<評価>
☆☆☆☆

「地獄風景」(中編小説)

<あらすじ>
億万長者といわれる喜多川家に生まれた一人息子の治良右衛門(じろえもん)は、M県Y市に「ジロ娯楽園」という遊園地を作り仲間たちと共に生活していた。
ある日、園内の巨大迷路で治良右衛門の恋人である諸口(もろぐち)ちま子が何者かによって殺害された。
治良右衛門の依頼で名探偵木島刑事が園内に住むことになるが、その後も立て続けに三人の仲間たちが殺される。
凶器に使われた短剣などから前科者のサディスト湯本譲次が被疑者として引致されたが、その間にも殺人事件が起き、湯本譲次は無実と分かる。
木島刑事が日夜探偵に努力していたが、いつまで経っても何の手掛かりさえ掴めない。
そんな中、見えぬ殺人狂が楽園のメンバーの皆殺しを予告していたジロ楽園カーニバル祭が開催され、更なる惨劇が起きる。

<レビュー>※ネタバレあり
カーニバルでの無差別殺人により、木島刑事はようやく治良右衛門が犯人であることが分かります。
治良右衛門が「人殺しをするために作った」というジロ楽園を崩壊させるスイッチを自ら押すと、一面は廃墟となりカーニバルの客も皆殺しとなります。まさに地獄風景です。
治良右衛門はその後、もう1人の恋人である木下鮎子(あゆこ)と軽気球で大空へと逃げていって物語は終わります。
前半は多少変態的要素はあるものの、比較的シリアスな推理物の印象を受けます。一方、後半は非現実的な世界で巻き起こる大虐殺の様相を呈しますが、コント的な滑稽さすら感じます。
観覧車から鉄砲で短剣を発射したり、軽気球の縄ばしごを弾丸で撃ち切ったり(まぐれ当たり)といった殺害トリックはあまり面白みを感じませんでした。
評価は前半が星4つ、後半が星2つ、インパクト込みでトータル星3つとしました。

<評価>
☆☆☆

「モノグラム」(短編小説)

<あらすじ>
わたしが勤めていたある工場の老守衛、栗原一造(くりはらいちぞう)の経験談である。
ある日のこと、浅草公園で三十前後の若者、田中三良(さぶろう)が栗原に声をかけてきた。お互い見覚えがあるような気がするが思い出せず、その日は別れた。
それから四、五日経って田中に再会した栗原は一つの懐中鏡を見せられる。それは田中の姉の北川すみ子が生前持っていた物で、裏に栗原の若い時分の写真が隠されていた。すみ子は栗原が学生時代に片思いをしていた相手である。
田中は栗原に会う前に写真を見ていたため会ったことがあるように誤解し、栗原も田中にすみ子の面影があったため見覚えがあるような気がしていたのだ。
すみ子が栗原の写真を隠し持っていたことと、懐中鏡のサックに一造の頭文字「I」とすみ子の頭文字「S」がモノグラム(組み合わせ文字)として刺繍されていたことから、実は片思いではなく両思いであったと気付く。
ある日、田中からもらい受けた懐中鏡とすみ子の写真が栗原の家内の園(その)に見つかってしまうが、それがきっかけである事実が判明する。

<レビュー>※ネタバレあり
当然単なるおのろけではなくオチがあります。
懐中鏡は元々は園の持ち物で、刺繍されていた「S」はすみ子のSではなく園のSでした。
なぜ園の懐中鏡をすみ子が持っていたのかというと、園と同じ女学校に通っていたすみ子が修学旅行の時に園から盗んだのです。
栗原からすれば、やっぱり自分の片思いだったと分かってがっかり、さらに好きだった人が泥棒だったという二重の失望を味わうどんでん返しが面白い。

<評価>
☆☆☆☆

「日記帳」(短編小説)

<あらすじ>
わたしは病気で死んだ弟の日記帳を読み、弟が遠縁にあたる家の若い美しい娘、北川雪枝(きたがわゆきえ)と文通していたことを知る。
わたしは二人の文通に暗号が隠されていたことに気付くが、当の二人はそれぞれの暗号に気付かなかった。
お互いに恋しあっていながら相手の気持ちに気付かず、弟が医者から病を宣告されたタイミングで文通は途絶えた。
ひとりは失恋の痛手を負ったままこの世を去り、ひとりは失恋の思いを抱いて長い生涯を暮らさなければならない。
わたしは若い二人の気の毒な失敗に心を痛めたが、もう一つのもっと利己的な感情が心を狂うばかりにかき乱した。

<レビュー>※ネタバレあり
最後の一文で、弟の死ぬ2か月程前に兄と雪枝の婚約が取り決められていたことが明らかになります。お互いが暗号に気付かずに気持ちが伝わらなかった切なさに加え、最後の一文で読者に更なる切なさを感じさせます。
兄と雪枝はどんな気持ちで過ごしていくのでしょうか。

<評価>
☆☆

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